元正天皇がそばを国の食糧対策の一環として公式に取り上げたことにより、その頃から出雲地方でもそばの栽培が始まったようですが、本格的に出雲地方にそばが文化として根付いたのは江戸時代になってからのようです。
信州の殿様・松平直政が松江城に入城した際に、そば職人を一緒に連れてきたことが始まりと言われています。
そばは庶民の間ではもちろんご馳走でしたが、上流武士の間へも浸透し、さらなる上品なご馳走として、松平不昧公の茶道文化の発展とともに盛んになり、出雲そばが全国的に有名になったのです。


出雲そばは戸隠そば(長野県)、わんこそば(岩手県)と並び日本三大そばの一つです。しかし出雲そばには大きく分けて「食べ方」と「挽き方」の二つの特徴が挙げられます。
「食べ方」については、だし汁の使い方が大きく違います。
ざるそば、盛りそばなど一般的なそばの食べ方は、だし汁が別の器に入っており、食べるときそばをだし汁につけてたべます。しかし出雲そばの中でもっとも有名な割子(わりご)そばは、だし汁自体を器に入れて食べます。
「挽き方」については、信州のさらしなに代表されるように、そば粉の白い部分を使うのに対し、出雲そばそばの実を一本挽きという独特の技法で甘皮まで臼で挽くため、そばの色は濃く黒く見え香りも強いです。


出雲そばの中では三段の丸い漆器にそばを盛って出す割子(わりご)そばがもっとも有名な形です。
割子とはそばを入れる容器のことで、武士の弁当箱であった割盒から始まったと言われています。だし汁自体を器に入れて食べるため、だし汁を入れる容器の口が狭くなっています。
信州そばは麺をつゆにつけてからすすって食べる食べ方が正しいが、出雲そばは噛んで食べるものなのだそうです。
また、薬味にはかつお節、大根おろし・やまいも、のり、ねぎ、紅葉おろしが用いられます。


釜で湯がいたそばと、湯がいたお湯(蕎麦湯)とを一緒に器に盛り、そこにダシ汁を足して食べるのが釜揚げそばです。
麺類は通常、麺とダシを別々に調理し、最後にあわせるのが一般的ですが、湯がいたお湯(蕎麦湯)も一緒に食す食べかたは出雲独特の食べ方といえます。
ビタミン、ミネラルなどがそば湯には溶けだしているので栄養価も抜群です。また、蕎麦湯の中には釜の中でそばを混ぜるときにそばの栄養分が溶け込むことから、味・風味など出雲そばの味を一番引き出すのが釜揚げそばであるとの見方もあります。


うまいそばは昔から「三立て」とよばれ、粉の挽き立て、麺の打ち立て、麺の茹で立て、にあるとされています。
しかし、そばの神髄を究めるならそばの採れ立てを知る必要があります。近年では冷蔵技術も発達しましたが、採れ立てのそばにはとうてい及びません。
そばの花は9月に咲きはじめ、10月にはそばの実がなり始めます。従って、11月、12月は新そばの時期でおいしい!中には、採れたての実を少し熟成させた1月、2月に打ったそばが美味しいという人もいます。
寒くなるにしたがい薬味に使われるネギや大根もだんだんと味を上げていきます。皆さんも一度「四立て」の出雲そばを狙って食べてみてください。


そばは昔から高品質の蛋白質を含んでいる優れたバランスの良い栄養食品であることが知られています。そのほかに毛細血管を強化するルチンや肝臓を守るコリンなどを含む事が注目されています。
また、そばの持つ栄養は生そばをゆでると半減してしまうので、そば切りよりもそば粉をそのまま用いたそばがきのほうが栄養価が高くなります。
こんな素晴しい出雲そばを食べてみんなで健康になりましょう。


出雲そばは伝統を守ることも重要ですが、地域の文化や伝統を継承する取り組みを始めています。地伝酒の復活と辛味大根の栽培が注目されます。
地伝酒は、古来より宍道湖七珍料理など出雲の郷土料理の基調をなすものとして重宝されていました。また、日本酒とみりんの中間的なもので、甘味はみりんの半分、逆に旨味は3~5倍もあります。
外観は弱アルカリ性で糖とアミノ酸が結合するため赤くなり、後口の良いあっさりした美味しさです。
また薬味に使う辛味大根は、浜大根などの出雲原生種で、近年小規模ながら栽培が始まりました。
さらに、そば打ちの技術も変わってきて、石臼をつかう製粉会社や自家製粉をする店も少しずつですが増えてきています。







